2006年 08月 24日

斎藤投手の魅力

早実の『ハンカチ王子』  斎藤投手の魅力は? [ 東京新聞 ]

 夏の甲子園を歴史的な名勝負の末に制した早稲田実業のエース斎藤佑樹投手の人気がすごい。「ハンカチ王子」の異名のもとになった、青いハンカチは飛ぶように売れる。四連投を支えた「酸素濃縮カプセル」にも問い合わせが殺到。「人気低迷する野球界の救世主になる」という声もあるほどだ。日本人のハートをわしづかみにした十八歳の魅力はどこに-。 (片山夏子、中里宏)
 「同じハンカチが欲しい」「どのブランドか教えて」
 斎藤投手が、甲子園のマウンドで、ポケットから青いハンカチを出して汗をぬぐったことから、「幸運の青いハンカチ」ブームが起きている。
 東京・池袋の西武百貨店池袋本店では、駒大苫小牧と引き分けた二十日の決勝後、問い合わせが相次いだ。優勝が決まった二十一日にはハンカチ・タオルの売り上げが前年比200%に。同店は二十二日から急きょ、紳士物売り場に「青いハンカチコーナー」を設置。この日の売り上げは前年比300%に達した。
 青いハンカチを置いた紳士物売り場には、三、四十代の女性が多いが、中には二十代のOLの姿も。
 ■ブランドは?商品探し過熱
 豊島区の主婦竹内久美子さん(36)は「仕事に御利益がありますようにと友人に贈る。斎藤君の使っていたブランドが知りたかったのだけれど」と少し残念そうだった。
 同店広報担当の亀井奈緒子さんは「紳士物売り場がいつもと違う雰囲気になりました。斎藤投手が験を担いで同じものを使い続けたので、ブランド特定も過熱している」と話した。
 早稲田実業の地元、東京・国分寺にあるイトーヨーカ堂でも「優勝後から青いハンカチやタオルが次々と売れています」。
 大手ハンカチメーカー「川辺」(東京)には、百貨店などから「そちらの商品ではないか」と問い合わせが相次いだ。柄の情報を集めたが、「薄い青色に白で英語が入っているようだが、特定は難航している」
 もうひとつ「斎藤投手効果」でブームになっているものがある。高気圧酸素カプセル。斎藤投手は決勝前日も、宿舎に持ち込んだ持ち運び式のマシンの中で体を休めたという。
 酸素カプセルは、二〇〇二年のサッカーW杯直前に、左足の甲を骨折したベッカム選手が使った。全治六週間だったがぎりぎり間に合い、「ベッカムカプセル」と有名になった。
 二年前、日本で初めて製造した高気圧酸素カプセルの販売を始めた「アルファ販売株式会社」(京都市)によると、圧縮空気に新たに酸素を加え、通常空気中の約21%を占める酸素を30-35%の濃度にするため、全身から高濃度の酸素が取り込まれ代謝が上がるという。
 小島広三同社会長は、「血行が良くなって疲れが取れたり、二日酔いが治ったりする。骨折などけがの治療にも効果があるといわれ、整骨院や病院でも使われている」。一台約四百万円と高価だが月十-十五台は売れる。「ブームはこれからですよ」とほくほくだ。
 東京・北青山の「ボディーチューニングサロン オーツープラス」は、ここ二日予約電話が鳴りっぱなし。「どういうものか」「効能は」と疲れている会社員などから予約が殺到している。
 どんな効果があるのか。実際に体験してみた。
 銀色のビニールに包まれた大きなカプセルに入る。「閉めますよ」とファスナーが閉められ密室に。氷まくらが快適。中は結構、広い。シューッと音がして酸素が入ってくるとカプセルがドームのように広がる。一・二気圧まで上がるので、耳に少し圧迫感がくる。ゆっくり呼吸するうちに、いつしか眠っていた。
 一時間後、ぼーっとして起き上がると、体がリラックスし、肩が軽くなっているのを感じた。「椎間板(ついかんばん)もゆるむんですよ」と言われて測ると、一六四・六センチだった身長が何と一センチも伸びていた。
 「ハンカチ王子」は、なぜこれほどまでに世の中の共感を集めたのか。
 「他人を見下す若者たち」の著書がある速水敏彦・名古屋大大学院教授(教育心理学)は「斎藤投手は礼儀正しそうに見えるし、ハンカチをきちんとたたんでしまうなど紳士然としている。傍若無人な若者が多い中で、ああいう青年を見ることが少なくなった。大人がつい拍手を送りたくなる気持ちは分かる」と話す。
 スポーツで頂点に立った若者として、斎藤選手と、世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級チャンピオンの亀田興毅選手を対比させる人も少なくない。
 行儀の良い斎藤選手が「善玉」なら、対戦相手を威嚇したり見下す発言をすることが多い亀田選手は「悪玉(ヒール)」の扱いだ。
 “しつけ”をめぐり、亀田選手の父親と民放ワイドショー出演中に激論となった漫画家のやくみつる氏は「(激論で)世の中の反応は(賛否)半々だった。ブームで斎藤投手が礼賛される部分は健全で、そういう目が世の中に残っているということは愉快なこと。(亀田選手をよしとしない)もう半分の人の受け皿ができた感じ」とみる。ただ、王子様ブームに関しては「多分につくられたもので、斎藤君もとまどっているのでは。(亀田選手も)都合のいい対立軸として据えられた」と苦笑する。
 ■実は兄と同居 親元から自立
 さらに「きちんとした立ち居振る舞いをする斎藤君は、実は兄と同居して親元から自立している。逆に亀田選手は父親に従順で、親にとっては都合がいい。世の親たちは、どちらがいいのか自問自答してみては」と提案する。
 前出の速水教授は著書の中で、競争社会の中で劣等感を抱いた若者が、他人の能力を否定することで自分の価値を高めようとする感情を「仮想的有能感(他者軽視)」と造語している。
 駒大苫小牧のエース、田中将大投手との2試合にわたる投げ合いを「男と男の勝負」と称し、一歩も引かなかった斎藤投手は対極にいるということだろう。
 一方、「斎藤投手と亀田選手には共通点がある」というのはトレンド(流行)研究家の菅原健二氏。
 「『国家の品格』がベストセラーになっているように、今は気品があるということがトレンドになっている。気品があるとは余裕があるということ」
 ■血にじむ努力 表情に出さず
 亀田選手に気品とは首をかしげたくなるが、「亀田選手は、王座決定戦ではよれよれになったが、この前までは余裕で楽々と勝っていた」からだそうだ。
 その点、斎藤投手は文句なしだ。「クールでさわやか。懸命さが表に出ず、力を余して投げているように見えるところに、人は気品を感じる」
 規定による引き分けとなった二十日の決勝戦で、斎藤投手は延長十五回に最速の147キロを記録した。
 「そこがポイント。トリノ冬季五輪女子フィギュアスケート金メダルの荒川静香選手も同じだ。気品があり、きりっとした姿勢が受けた。採点の対象にならないのにイナバウアーをやる余裕もあった」
 斎藤投手は、下半身を徹底的に鍛えるなど血のにじむような努力をしてきた。ところが、顔や体つきにいかつさはない。菅原氏は「そこもポイント。仮面ライダーの俳優を見れば分かりやすい。初代の藤岡弘さんは男くさくて熱い感じだったが、今の仮面ライダー俳優は汗や泥のにおいがしそうにない」と解説する。
 もっとも、余裕を見せながら優勝するなんて、まねをしようにも簡単にできることではない。菅原氏は「かなりの実力の裏打ちが必要」とくぎを刺した。
<デスクメモ>
 新人のころ、エース荒木大輔を擁する早実を甲子園で取材した。当時の取材宿舎は畳の大部屋で、扇風機の風に原稿用紙がひらひらと舞った。汗で鉢巻きが重くなった。あれから二十四年。「高気圧酸素カプセル」となれば隔世の感があるが、丸刈りのりりしさは「大ちゃん」も「佑ちゃん」もよく似ている。 (充)
[PR]

by azatsu0422 | 2006-08-24 23:35 | スポーツ


<< しばらく出かけます。      女性にとって「都合の良い男性」... >>